皆さんは、五感の中で最も使っている感覚は何でしょうか? 人は視覚から得る情報がとても多いと思います。 私たちは、その視覚が失われていますので、聴覚・触覚を使って得る情報が多くなります。
- 音で、信号の色を判断する、声で人を判断する…。
- 手で触って形を判断する、指で点字を読む(触読)…。
しかし、聴覚や触覚で得る情報には、限りがあります。 視覚で得た情報(画像)を音に変換してもらうことで情報の量は多くなります。 つまり、文章を読んでもらったり、形などを説明してもらったりとそこには第3者の援助が必要になります。 パソコンの低価格化や、音声対応ソフトの普及に伴い、私たち視覚障害者もパソコンを操作する機会が与えられるようになりました。 パソコンを使うと、今まで晴眼者に頼り切っていた文字(墨字)情報を晴眼者とともに共有することが出来るようになりました。 そこで、私たち視覚障害者がどのようにしてパソコンを操作しているのかをほんの一端ですが、覗いてみませんか。
ウィンドーズの操作
ウィンドーズを操作するために、スクリーンリーダー(ウィンドーズ画面読み上げソフト)を使って音声で確認しながら操作します。 スクリーンリーダは、数社から発売されており、そのソフトによって音声の質やショートカットコマンドなどが違います。 また、メニューの深さによっては、読み上げるソフト、読み上げないソフトなど各種ソフトによって微妙に機能が異なっています。 晴眼者の方は、マウスを使ってソフトの起動や終了、その他いろいろな操作を行いますが、私たちは全ての操作をキーボードから行います。
例
ソフトの起動
- [WINDOWS]キーを押して『スタートメニュー』を開きます。
- [上下、左右矢印]キーを押して目的のソフトを音声で確認しながら選択します。
- [ENTER]キーを押してソフトを起動します。
プルダウンメニュー
- [ALT]キーを押してメニューを開きます。
- 『ファイル』や『編集』などを[左右矢印]キーで選択します。
- その中の項目を選択するには、[上下矢印]キーを押して選択します。
- 目的の機能を選択したら[ENTER]キーで実行します。
ワープロ
視覚障害者用に開発されたソフト、市販のソフト(完全ではないが音声ガイドする)を使います。
文字の入力
私たちは、点字を使って文字を読み書きしています。 専用の点字板(いろいろな種類があります)を使って文字を書きます。 一般的に点字定規に点字用紙を挟み、点筆を使って点字を書いていきます。 定規は、下の板の部分が一つの点に対応する球状の凹面が並んでいます。この上に用紙をセットします。その上に定規の上の板をセットし、用紙を挟みます。 上の板は、点字を書くために枠が並んでいます。 一つの枠には、縦に3個、横に2個合計6個の点が書けるようになっています。 右の上から下に向かって、1の点、2の点、3の点。左の上から下に向かって4の点、5の点、6の点と名前が付いています。 一つの枠の中に、1の点を書くと「あ」、1の点と2の点を書くと「い」、1の点と4の点を書くと「う」…と言うように6個の点の組み合わせによって文字を表します。
キーボードから文字を入力するときも、点字入力ソフトを使うと特定の位置に6個の点を割り当てることが出来ます。(F=1・D=2・S=3・J=4・K=5・L=6) 「あ」を入力=[F]を押す、「い」を入力する=[F][D]を同時に押す、「う」を入力する=[F][J]を同時に押す。 また、6点の周辺に[矢印]キーや[ENTER]キーなどが割り当てられているので、キーボードからほとんど手をを離さずに操作することが出来ます。
文字の確認
同音異義語などをどうやって確認できるのか? たとえば、「紙」は『しへいの し かみ』、「髪」は『もうはつの はつ かみ』と言うように音声で確認できます。 滑らか読みの機能を使うと、文章を読ませることが出来ます。ただし、漢字の場合音読み・訓読みの関係で正しく読み上げられない単語もあります。
以上のように、私たちは文字をパソコンで扱えるようになりました。 ワープロは勿論音声対応のメールソフトやインターネットブラウザソフト、住所録ソフトなど視覚障害者にも使えるソフトが増えています。 今まで、晴眼者の方に頼り切っていたことが自分一人で情報の収集や発信が出来るようになったことは、とても素晴らしいことです。
こんなソフトもあるよ!
このように、データを作成したり、元々のデータを修正、編集することが出来ます。 しかし、日常生活の中で、ガス料金の請求書や役所からのお知らせなどが点字の書類や録音テープ等で送られてくることはほとんどありません。 そのために、墨字の書類などを確認するための、活字OCRソフトが発売されています。
このソフトは、スキャナから読みとった原稿の内容を解析して、読み上げてくれます。 基本操作は、テンキーを押すだけのとても簡単なソフトです。 原稿によっては認識率が違ってきますので、100%近く正確に読み上げてくれる原稿もあれば、全然なにが書いてあるのか解らない原稿もあります。
点字の読めない人のために、点字をスキャナで取り込んで読み上げてくれるソフトもあります。 勿論、点字を書くためのソフトもありますので、点字プリンタで同じ内容の文章を複数印刷することが出来ます。
私たち視覚障害者がどのようにパソコンを操作しているのか少しでも想像できましたか? WINDOWSの設定など全ての場面で音声ガイドされないし、音声対応のソフトを使うにしても簡単に使いこなすと言うわけには行きません。 アイネットの皆さんが、パソコン点訳、また、私たち視覚障害者のパソコン操作に関しても支援していただけることは私たちにとって大変恵まれていると思います。 このように恵まれた条件に甘えることなく、一つでも多くのことを身につけて、自分の物にしていかないと行けませんね。 そして、教えてもらうだけでなく今度は自分が初心者に教えてあげられるようになることが理想です。 (利用者の声)